年末の木星と土星の夜のショーは
多くの観客が見守る中で繰り広げられました。

そして、まるで幕が下りたかのように、
その後、人々は観客席から去ってしまいました。

アンコールの掛け声もなく、
あっけなく。

それもそのはず、
木星と土星は出会った後、
静々と舞台から去ってしまい、
二度と舞台には登場しなかったのです。

いまごろお日さまと一緒に
楽しくオフを過ごしていることだと思います。
朝になればお日さまの後からついて昇り、
お日さまのそばへ駆け寄っているのですが、
お日さまの光が強すぎて空気が輝いているので、
残念ながら見ることができません。

すべての観客が立ち去った観客席に残り、
ただ感慨に浸りながら、
木星と土星が立ち去った右手を
眺めていると、
おお、同じ辺りにキラキラと輝く星が!

なんというまぶしい輝き!
輝いたか、と思ったら
すぐに沈んでしまいました。

そうです。パンフレットの端っこの所に小さく、
後座「すばしっこ水星の一発芸」と書いてあっ
たので、待っていたのです。

すばしっこ水星は幕開けの夕暮れの空か、
幕が下りる直前の朝焼けの空に、
本当にたまにしか出てきません。
それも一瞬だけ。
それで、その存在を見たことのある人は
ほとんどおらず、見たとしても
それがすばしっこだと知る由もありません。

すばしっこはおっとり木星と同じぐらい
明るく輝きますが、
驚くほど小さい小人さんです。

お日さまのそばで、
お日さまの光をたくさん浴びているので、
とっても元気に輝くのです。

元気なのは輝きだけではなく、その動きです。

他のほとんどの惑星たちは一旦左の空から現れ
たら半年ほどは夜空を飾ります。
ところがすばしっこは夕方出たかと思えば
次は朝、朝かと思えばまた夕方、忘れたころに
ちらっと現れ、落ち着きがありません。
まるで背中に羽根が生えているかのようです。

でも、ほかの星たちやお月さまが、
お日さまから遠く離れて行くのに、
すばしっこはお日さまのそばから離れることが
できず、いつもそばでじゃれています。
なんだか、子犬のようにも思えてきました。

一発芸をやった後、水星は右手から退場し
お日さまと木星と土星と一緒に
楽しく過ごしていることでしょう。
めでたし、めでたし
   *   *
長い夜の舞台が終わり、
朝が訪れ、
優しいお日様を感じながら、
お日さまを眺めました。
その周りで、木星や土星やすばしっこ水星が
たむろっているのが見えたような気がしました。

2021/1/22

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