春の日々は日ごとに変化していきます。
まるで、今まで我慢していた願いが
一気に噴き出したかのようです。

今年は、イースターが早めに
やってきます。
4月4日の日曜日がイースターです。

イースターが早いと春の訪れも早い、
と聞いたことがありますが、
今年は桜も早く、例年は4月初めに
咲く桜が、すでに散り始めています。

今年も桜の名所では、花見が自粛され、
残念なことだろうと思います。

私は、昨年に引き続き、今年も桜の花
を見られる喜びをかみしめています。

今年はイースターの満月に照らし出さ
れた夜桜を見ることにしました。

夜桜、なんと妖艶なのでしょう。

提灯が風に揺れ、
紅白の幕の裾がたなびき、
笛の響きと共に
妖精が、やはり
薄絹をまとって舞っている。

提灯は揺れながら連なり、
その先はおぼろげな暗さへと
果てしなく繋がる…
黄泉の国への扉が開いたかのように。

風が吹きすさび、
提灯が揺れる。
紅白幕はたなびき、
樹々も揺れる。

どうして、こうも赤提灯は
夜桜に合うのでしょう。

サクラの花をほんのりと
下から照らし出し、
浮きあがらせます。

それはまるで、魂の灯りがともり、
感情が淡く色づいているかのようです。

ふらっと、赤提灯に
引き寄せられるのも、
分かるような気がします。

空からは、イースターの満月が
上がってきます。
それでも、やはり和という感です。

月の光を浴びて、桜が咲いています。

イースターのころの満月は
秋の中秋の名月と同じ動きをしますが、
全く違ったものに感じます。

中秋の名月が目覚めていく
感じがするのに対して、
イースターの満月は自然の華やかさ
の中に眠り込んでいくようです。

淀になった川を挟んで、
両岸に神社があります。

間には、深く水が淀み、
その上に満月の月を映しています。

途中で立ち寄ったウナギ屋さんが
言っていました。

「そういえば、この近くの竈門神社に
人がたくさん訪れるようになって、
そばに出店も出るようになった
らしい。」
「なんでも鬼滅の刃っていう漫画に
出てくるらしい。」
「おれはその漫画しらんけどな。」
「以前は、なーんもなくて、
だーれも来んとこじゃったけどね。」

名が知られていくとは
不思議なものです。

お参りを済ませ、戻る途中、
街灯に照らされた大きな水路の表面に
何かが泳いでいるような波紋が
できていました。

水の流れオタクの私は、
水が流れることで、流れの境に、
筋が生まれていると思いました。

「なんと面白い現象だろう。」

ところがその筋は、あたかも
泳いでいるかのように動いていきます。

近づいてみると、それが泳ぐ生きもの
だとわかりました。

「ウナギが泳いでいる!?」
立ち寄ったウナギ屋さんで
ウナギの話をしていたので、
そう思ったのかもしれません。

その生きものは、
手前の方へ泳いでくると、
コンクリートの岸の所で
うごめいています。

いよいよ近づいて見てみると、
なんとそれは大きなヤマカガシで、
それも、二匹が絡まったまま、
たどり着いた岸で、
じっとしていました。

あまりの意外さと不思議な光景に、
しばらくその場を離れることが
できませんでした。

そして、写真を撮ることも忘れ、
その場を立ち去りました。

お月様は高く昇っていました。

2021/04/02 井手芳弘

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