240 ザーレムライア工房での研修・2

何とか戻ってきました。

行っているときは長く感じましたが、

戻ってきてみると

あっという間だったように感じます。

ザーレムライア工房では、

今まで話が多く、

実際に作業をすることが少なかったのですが、

今回、自分で作業をしたり、

それに付随して作業についての話をする中で、

今まで気が付かなかったことがたくさんありました。

キンダーハープをカンナで削っているときのことです。

私にカンナの使い方を教えた後、

職人のマーティンがブリッジに使う木を

手に握りながら言いました。

「こういうものもね、

すべてカンナで削るんだよね。

みんなはルーターを使って作るから

20個ぐらい作るのに物の1時間もかからない。

これ20個カンナで仕上げようとしたら、

2日はかかるよね。

おまけに終わったころには、

身体いたくて仕方ないだろうね。」

えっ!と思いました。

一つ一つ手で削っていたんだ、って。

どうやってこの形を仕上げていたんだろう、

って思っていたので結構驚きました。

 

また、ニーダーさんは、

ライアは一人の人が一台ずつ

最初から最後まで作業する、

ということを言っていました。

それとか、弦を作る作業は

一日4時間までで。

それ以上作業しない、などとも。

効率を考えると、

流れ作業によって

まとめて作る方がいいはずなのに、

あえてそうせずに、

一台に集中しながら仕上げていく姿勢に、

楽器製作の原点を見る気がしました。

 

再びマーティン。

ライアの共鳴板を削りながら、

「ほかのメーカーのライアの共鳴板は

中心も周りも同じ厚さだけど、

ザーレムのライアは中心部がやや厚くて、

縁の厚さが薄いんだよ。」

そんなことはとうに知っている、

と思っていました。

すると、

「初めは、削っていてもただ周りを薄くするだけだったけど、

最近はね、こうやって削っていくと、

だんだん音が変わっていくのがわかるようになってきた。」と、

ライアをコツコツと叩いて

共鳴させながら言ったのです。

「そして、かなりいい感じに響くようになってきた感じがする。」

えっ!共鳴板って、

音を聞きながら削っていたの?

新たな驚きです。

再び、ニーダーさん登場。

「来年あたり、

ディスカントライア(ソプラノライアの一オクターブ上の音の出るライア)

を開発しようと思っている。」

「大体の形はイメージが出来ている。」

「ライアの演奏家と話をしていると、

いろいろ頭の中にイメージが生まれるんだ。」

 

不思議だったのですが、

バスライアを作るときに、

あれやこれやいろいろ試作したわけではなく、

いろんな仕組みを組み入れながら、

的確に完成度の高いものを

どうやって仕上げていくのだろうか、と。

「インテリゲンツ(思考的なもの)から生まれたもの、

思考の力だけによって考え出されたものは

往々にして、楽器としてはよくないものが生まれてくる。」

 

音と形の関係も、

簡単に割り切れるものではなく、

生き物のような

不思議なかかわりがあるのだとつくづく思ってしまいます。

 

「ヨシ、お前。ライア一台作ってみるか?」

突然聞かれました。

も、もちろん!
で、どのくらい日数があれば?

 

「そうだね、14日ぐらいかな?」

「初めから作っていくから大変だぞ。」

次回、作業することを約束して、

駅に送ってもらうことにしました。

 

駅に到着して、

車を降りてホームに降りようとして、

線路がないことに初めて、

気が付き大慌て。

道理で、この駅の名前じゃなくて、

別の駅の名前がインターネットの時刻表に乗っていたんだ、と納得。

大急ぎでその駅に向かい、

事なきを得ました。