私たちの身の回りにあって、とっても不思議なもの。
人知れず、地面の中を進んできたかと思うと、
硬い岩の隙間から湧水となって突然、姿を現す。
静かに、しかし、絶え間なく、流れ続ける。
その周りの草や樹や岩たちの空間は
神聖なものに包まれている。
その神聖さは、私たちをいやしてくれる
健康さに満ち満ちている。
風景の中に泉があるということを知っているだけで、
突然その風景が
不思議な生き生きした深さを持ったものに変わる。
<私の中にも
こんこんと水が湧きだしている場所があるのだろうか、
その清らかな水の周りには、
植物たちが調和のとれた美しさの中に育っている場所が>
水は自在、どんな隙間もその形を自由に変えて進む。
突然岩の間から現れたかと思うと、
滝となり滝底に向かってまっさかさまに落ちていく。
しばし、自由の身となった水は
空間の中で剣の形となり、滝つぼに突き刺さる。
その柔らかさで、どんなに硬いものでも削っていく。
その自由な動きで、深い谷を削り取る。
白く輝く剣は、時としてその周りに美しい虹を携える。
剣は流れの中でそこに現われるもの。
<私の中にもあるのだろうか。
どんなところでもくぐり抜ける自由で柔らかいものが?
それは、時として剣となり、どんなに硬いものでも削っていくものが?>
水は流れる。激しく身をくねらせ、
シュウシュウ、ゴウゴウと音を立て岩を削り、
石をころがしながら流れた水は
たくさんの流れを集め、
河となってゆったりと身をくねらせる。
緑色の濁りを伴った流れは、
その濁りを岸に堆積させながら、
浅瀬でキラキラと輝きながら
大きな緑色の蛇のように悠々と平野を流れていく。
空が真っ黒になり、激しい雨がやってくると、
突然緑の大蛇は目をさまして暴れ出し、周りのものを食べつくす。
<水は河の形の中を自分の形を
変え流れているのだろうか?
それとも水の形が河の形を変えているのだろうか?>
水は静まる。
海という受け皿の中に流れ込んだ水は、
身を鎮め、自分の中に持ち込んだものを静かに、
静かに積もらせていく。
自分が暴れた動きは大きな砂粒となり、
静かな動きは、きめの細かい泥として
平らに降り積もる。
そして、長い年月を経て、硬い岩の大地となる。
風は波を作り、空と雲と山をリズムの中に包み込む。
<私の中にあるのだろうか、静かな深みの中で、
積み重ねられていくものが?>