261 早起きはつれづれの得 パート2

「あーっ、コーヒー美味しい!」
コーヒーカップ片手に海際の道を歩く。

先ほどの藻が溜まった場所にたどり着く
堤防の方の道の柵を眺めながら、

ふと、あることが頭によぎる。

平山郁夫画伯のシルクロードの絵。
広大な砂漠の向こうに丘があり、太陽が出ている。
その手前をラクダの小隊が列をなして歩いていて、

ラクダの影が手前の砂漠の上にできている。

ところが、その影は実際の影よりは

水に映ったラクダの像のような影である。

そのことで、砂漠の情景に

何とも言えない静けさが漂っている。

どのような意図でそのような影を書いたのか、

画伯に往復はがきを書いて質問したけれど、

残念ながら返事は帰ってこなくて、謎のまま。

ふと見ると、渡る道を挟んで、

堤防の右の道の柵は水面に映っていて、

映った像はまっすぐ下に伸びている。

それに対し、左側は藻の上に柵の影ができていて、

放射状に広がっている。
かなりの違いにただ驚くのみ。

藻の方を見ているうちに、

藻が無くなってる境あたりの面白さに気付く。

そこは、影と反射で映った像が交錯している。

慌てて、コーヒーを渡る道にある柵の上に置くと、

シャッターポイントを探して移動

「面白い!」「おもしろすぎる。」
「柵じゃちょっと短いかな。」

「そうだ、散歩する人だったらもっと影が長くなるはず!」
堤防の道を通る人を待ち受ける。

こちら側はなかなか人が歩かない。
みんな右側の方へ。

そうしながら、時折、置き去りにしてきた、柵の上のコーヒーに目をやる。

「この堤防の上に置き場所があった。持ってくればよかった。」
そう思いながら、通る人が不審がって持っていかないことを願う。
よし、動画をとるぞ…!
興奮しながら、何度も試みる。

ひとしきり楽しんだ後、

コーヒーを再び手にし、心地よい安堵感と共に、もう一度海の底を覗きこむ。

「ありえない!」
「なに、この美しさは!?」

水の底で鮮やかな虹色に輝く

光の水滴(斑点)。まるで、光の真珠!

それは、ただの水底に沈んでいる

ビニールのごみ。

それが、光を反射して鮮やかに輝く。

場所を変えて、違う角度か見ると何にも見えない。

あまりの美しさに呆然と立ち尽くす。

いや、何枚も撮影してみる。
パシャリ、パシャリ、パシャリ。

そばを通っている人に、

「ホラ!見てください!」と声をかけたくなる気持ちを抑える。

「それって、ただの不審者だもんね!」
おまけを感謝しながら、その場を離れる。
しばらく歩く…
「収穫多かったな~…」

三角形に映る太陽の反射が面白くてパシャ!

「ところで、水面に映る太陽の影はどーなってんだっけ?」
「出た―!また出てしまった新たな考え!」

こんどは、さざ波が出来て、

水面に太陽の細かいキラメキの反映ができるのを待つ。

「出た―!不思議な影!波があるのにはっきりと映る影!」

柵の影が煌めきの中にはっきりと出来る。

「よし、じゃ、柵が水面に映る

太陽の反射がない場所との対比も含めて、一緒に撮ってみよう。」
条件のいいさざ波が現れるまで、待ち続ける。

「こんな感じかな?」
パシャリ
「いや、こっちのほうがいいかも!」
パシャリ

* * *

何とか部屋に戻り、安堵。
「これ、つれづれに使える。」

脱線の悪い癖がたまに役に立つ。

窓から、先ほどの散歩の場所を眺めてみる。

そこには、相変わらず、

先ほどの太陽の反射のキラメキと柵の影が、

「遠く離れて高い所からはこう見えるだろう。」

と頑張って見せてくれている。
「面白い!面白すぎる。」
「じゃ、船の影は?」
なかなか終わらない。

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