272 四万十研修 II

何度か電話し、会話にも慣れてきました。
「今晩一晩泊めてーください?」
「どこのお部屋も一杯です。」

* * *

あきらめとともにかけた寿旅館。
「今晩一晩泊めてください。」
「うーん、どうしましょったらどうしましょ。」
<うーん、どうすんのかなー?>
「どうしましょったらどうしましょ。」
「なんとか準備いたしましょう。」
「それはありがとうございます。」

* * *

四万十川の支流に入り、より細い道をたどっていきます。
こうなったら、どんなところか楽しみです。
車を走らせ、道路から降りると、

そこは広い平らな場所と旅館というよりは合宿所のような平屋の建物が立っていました。
早速、合宿所の部屋に案内してもらいました。

奥の方には、せせらぎに面した縁台があり、絶景の眺めです。
それにしても、夕方の6時ごろなのに、人一人いません。
不思議に思って尋ねると、

今日はおやすみの予定で誰も泊まっていません、とのこと。
な、なんと、夏休みの土曜日の四万十川、泊まれるどころか、一人占め??!!
おまけにとどめの一声!
「縁台で朝まで過ごしてもらっても構いません。」
もう、だめ~、すごすぎる!
「食事はありあわせのものでいいですか?」
「も、もちろんです。」
「少し遅くなりますけどいいですか?」
「もちろん。」
食事の時間まで、目の前の川で水浴とばかり、

海水パンツにはき替えて、川に下りていきました。

「うーっ!」「冷たい!!」
誰も見ている人がいないし、水をかけられることもないので、

「ウウウ」と言いながら、チビチビ入っていきます。

全く男らしくありません。
「こんな冷たいの嫌だ!」と思いつつ、なんとか首まで。
慣れてくるとこっちの物、ぷかぷかと浮いたり、泳いだり…

空を眺めてみると、半月のお月様が高いところに出ていました。

(旧暦の七夕のお祭りのころだったのだろうか?後記)

水に浸かれた満足感とともに身体をふいていると、
出てくる、出てくる、先ほど見た夢が、次から次から。
「えっ?夢、見てないはずなんだけど?」
「だって、ずっと起きてたし…」
また、見た夢が出てくる、次から次から。
掴もうとすると逃げていく、そんな夢の数々を思い出そうと必死になる。
いったい何が起こった??
「ありえん!」
呆れてしまって、笑いがこみあげてくる。
意識のどこかが破れたのだろう。
込み上げてくる笑いと夢でそぞろになりながら、部屋に戻る。
途中、お風呂を沸かす薪の煙の懐かしい香りが漂ってくる。
「今日は一人だけなので家のお風呂でいいですか?」
「もちろん。」

夢を引きずりながら、お風呂から上がり、

縁台での夕食が始まる。
夕食は地元でとれた鮎、自家獲りの手長エビ、それに山菜と、地元のお米。
どれをとっても、最高の味わい。「こ、これ、ありあわせ??」
合宿所のたたずまい、清流のそばの縁台、最高の食事、そして、貸切、絶妙なコンビネーション。
宿のおばさんにお相手していただきながら、川のせせらぎをBGMに夜宴が続きます。

* * *

それにしても、あの夢の破れは何だったんだろう?
禊の体験だったのだろうか?
そういえば、デルフィーの神託の場所にも泉があり、神官たちは禊をして神託を与えた。
洗礼者ヨハネはヨルダン川で人々の洗礼を与えた。
いろんな宗教が水とのかかわりを持っている…
などなど考えながら、縁台の上で眠りに…

…枕元には川のせせらぎ…

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