277 霧差山

…朝起きると、あたりは深い霧に包まれていました…。

よっしゃ!

私は布団から起きだすと、

おもむろに服を着替え、車に乗り込みました。

朝飯前の自然観察です。目指すは霧差山です。

月山でブロッケン現象に出会ってから、

どこかでまた見ることができないだろうか?

と探し求めていました。

そして、はた(波多)、

と我らの北波多の朝霧を思い出したのです。

少し前、少し離れた大野岳という

眺めのいい山に朝霧の時に登り、

どこらあたりが一番いい場所かを探しました。

そして、霧差山の頂上がいい場所である

ということを発見しました。

わが家のある北波多はとても小さい盆地で、

真ん中に川が流れているので、秋になると、

天気のいい朝などに時々深い霧に包まれます。

* * *

その朝は、ヘッドライトをつけ、一路霧差山を目指しました。

昔、みかん畑があった道を通り、

大変な悪路に苦労しながら、

なんとかお茶畑にたどり着きました。

でも山頂からはだいぶん下です。

ちなみに、お茶にとっても霧はとてもいいそうです。

登ってみると、

お日さまは霧の中から出てきましたが、

すでに霧は薄くなっています。

なんとか条件のいい場所を探しましたが、

見つけることはできませんでした。

「また、別の日に再挑戦だ。」

仕方なく別の道を降りていきました。

でも、もう一度別の道から上ることにしました。

「確か、こちらの入り口が…、」

地元なのに30年ぶりぐらいなので、記憶も定かではありません。
しばらく上っていくと、やはりお茶畑に行きつきました。

そこらあたりは、まだ霧が残っていて、

木々の枝の間からお日さまの光が漏れています。

その光は霧の中に差し込み、

光の筋がはっきりと見えています。

太陽のきらめきを中心に見事な星の形をして四方に広がっています。

この光の筋のお互いが平行になっている、

平行光線である、ということはどうしても理解することできません。

ましてや、この光の筋を太陽を背にして眺めると、

また中心に集まるように見えるなど、有り得ないことです。

でも、試しに、その木のところまで行って

太陽を背にして眺めてみましたが、

その現象を観察することはできませんでした。

その代わりに、お茶畑にかかる、

薄いブルーのベールのような空気の色付きを見つけました。

ブロッケン現象は、もちろん観察できませんでした。
更に、光の筋を通り抜け、道を登っていきます。
山頂近くにたどり着きました。

そこにはお茶畑が広がり、霧は晴れ、視界が広がります。
そこでも、ブロッケン現象は見つけられません。

しかし、眼下には、

見たこともないような風景が広がっていました。

自分の住んでいる、見慣れたはずの場所が、

すべて霧の中に沈んで、見たこともないような

神秘的な場所になっていました。

まるで、高千穂にやってきたかのようです。

まさか、深い霧が差していたのを高いところから見ると、

こんな風に見えるなんて想像していませんでした。

突然、我らが北波多中学校(小学校?)

の校歌が浮かんできました

「霧差山の頂上に、伸びよ、若杉 その力…」

わが母校北波多中学校の校歌に歌われた霧差山
うかつでした。今気がつきました。

霧が差しているから、霧差山と呼ばれれいることを。
こどものころから、霧差山、霧差山と呼んでいたのに、

霧が差すから霧差山という名前だという事には、

これまで行きあたっていませんでした。
深い霧に包まれたディスカバージャパンならぬ、

ディスカバーキタハタは、

いつも見慣れた場所を裏側から見たような、

不思議な感覚でした。

* * *

帰り道、ふと道路を眺めると、

あります、あります。

木の暗がりに向かって細い光の筋が!

「どうせ、車なんか来ないし!」

と道路の真ん中に車を止めたまま、撮影開始です。
「おおすごい、光の筋が集まっている。」「やった、やった!」
喜んで撮影していると、白虹まで現れてサービスです。

ひとしきり写真を撮って、満足して車を発進させると、

突然、小型ダンプが猛スピードでやってきて、

車をバックさせることになりました。

ドッキリ!!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です