280 ライア作り・2

前回は、デザインして

カッティングするところまで話をしました。

今回は引き続き、彫る作業を紹介します。

 

これまでは、平面として

自然な自分の形を追求しましたが、

これからは立体としての形認識に変わります。

これは、普段、慣れていない感覚なので、なかなか大変です。

ましてや、丸ノミなど

持ったこともない方が多いので、

まず道具に慣れることから始まります。

右手で木槌を持って、

左手で持ったのみの頭をたたきます。

ノミを木に当てる角度が浅いと滑り、

深すぎるときに食い込んでいきます。

最初のうちはなかなか彫れませんが、

だんだん慣れてきます。

まず、表の穴の開いた下の胴の部分を掘ります。

お腹になった部分です。

浅いと、音を受け止めた感じがしません。

深すぎると抱え込んで

ため込んでしまう感じがします。

そんな感じがすること自体不思議です。

それが終わると裏側を彫ります。

裏側は、表面に沿わせて、彫っていきます。

とにかく彫って彫ってまた彫って、

という状態なので、作業が一番大変な時です。

部屋中、いや外まで、カンカンカンという音が響きます。

時々、そんな中で、

赤ん坊がすやすやと寝ていることがあります。

音がうるさいだろうに、と思うのですが、

意外と心地いいのでしょう。

 

そういえば、イエス様のお父さん

ヨゼフ様もお仕事が大工さんです。

何かを作っていく槌のリズミカルな音は、

創造力に満ちているのかもしれません。

ちなみに、私の最初の記憶は、

大工さんが、玄関を改修しているのを

祖父に背負われて眺めていたことでした。

今までは木を彫っていくという意識でしたが、

表面と裏面を彫ると、

中から形が生まれてくるという意識に変わります。

どれだけ彫ったかではなく、

どれだけ残っているか、どのような流れがそこにあるのか、

という感じです。

その感じをつかむためには

手で触っていくことです。

両手でつかんだり、

片手で持って手のひらで撫でてみたり、

木のささくれが刺さらないように気を付けながら触ります。

「あっ、ここはなんだか違和感がある。」

「流れが止まっている。」

「こぶがある。」などなどです。

最初はなかなかわかりにくい感じですが、

だんだんその感じがつかめてきます。

「ここ、なんだか、滞ってますね。」

「流さないとね。」

「ふむ!なるほど なるほど!」

だんだん不思議な会話になっていきます。

 

見ただけではわからないことが、

手で触ることによってたくさんわかってきます。

私たちが、いかに視覚に頼って生きているか、

ということが分かってきます。

そして、不思議なことに、

ライアの形が一つの生き物の形に感じ始めるのです。

「うーん!背中にもう少し丸みを持たせて

手を差し伸べてる感じにしようかな。」など、

人の姿とは似ていないのに、

背中がイメージされたり、

彫っていない手がイメージされたりします。

そして、それぞれのデザインに合った

生き生きとした形が生まれていきます。

形ができたら、仕上げ彫りです。

細かくノミを当てて、表面を滑らかにして、

最後は手でノミを持って彫刻刀で彫るようにして仕上げていきます。

彫が仕上がったらオイルを塗り、

ピンと弦の穴をあけ、ピンをねじ込んでいき、

いよいよ弦を張っていきます。

このころになると、「もうすこし、もうすこし」

と言いながらなかなかやめられない人が出てきます。

それまで、見えていなかった形が

分かるようになってきたので、気になるのです。

そこを非情に「彫るのはいつでもできますので、

とりあえず一旦仕上げてみましょう。」と作業を終わらせます。

弦を張る作業は慣れないとなかなか、

難しいところがありますが、最後の仕上げです。

 

皆さんは、意気揚々としながら作業が進めていかれます。

それまでの大変だったことも楽しかった思い出です。

弦を張り、音を合わせ、そこから弦の響きが

初めて周りの世界に響き渡った時の嬉しさは

何とも言えない感じです。

あたりが息をのんだように静まります。

宣伝です。

このようなライア作りの講座を

今年も東京の調布市の方で企画しています。

ノミや木槌などを使った経験のない方でも、完成できます。

ご興味のあるかたは、ぜひご参加ください。

日程は来年1月30,31日 3月19、20日の4日間です。

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