<春の気配を感じたら寒さも和らぐ>


というようなことを前回書きましたが、
寒いのは寒いな、と思う今日この頃です。

春の妖気は雪交じりの風に吹き飛ばされてしまいました。

コロナのせいであまり外出することがなく、
書くことも妙に回顧風になっています。

もう、2年もライアの研修にドイツに出かけていません。

今年で3年目に入ります。

いつも3月ごろに出かけていたので、
ふとした瞬間に、妙に懐かしさを覚えたりします。

ドイツに行かなくなったので、
その分、さぞかし仕事がはかどるだろうと思うのですが、
現実はそう甘くありません。

相変わらず、仕事に追いかけられているありがたい日々です。

ライアの研修に行く前は
ドイツのニュールンベルクで行われるおもちゃメッセに行っていました。

世界で一番大きなおもちゃの見本市で、
ドイツの伝統的な木のおもちゃから鉄道模型、
プラスチックのおもちゃ、
などが東京ドーム10個分ぐらいの建物の中に並んでいました。

そこを数日かけて周っていました。
一日に10kmほどは歩いていたかと思います。

ある時は、津川雅彦さんのグループに出くわしたことがあります。

私は一人で周っていたので、
たくさんのスタッフを連れられているのを見て驚くばかりでした。

それらの建物の中でも私に関係があるのは
2つぐらいの木のおもちゃのホールで、
その中に取引をしている業者のブースがいくつかありました。

取引しているところに行って、直接に顔を見て話をするのは
楽しいことでもあります。

私の店のような弱小なところでも、きちんと対応してくれました。
また、そのような対応をしてくれるところとしか
取引をしていなかったのかもしれません。

ある年などは高熱を出しながら、
「ベッドで寝ているわけにはいかない!」
とフラフラしながら周ったことがありました。

知り合いのブースに立ち寄っては座り込み、
冷たい飲み物を貰いながら、
次の知り合いのところでフラフラ座り込んでいたのを思い出します。

そうやって、頑張っていたメッセにも行かなくなりました。

面白そうだと思った商品も、日本の大手の業者との専属契約を結んでいて、
取引ができないことが多く、いつしか気持ちも冷めてしまいました。

そして、
「オリジナル商品を作らなくては!」という思いが立ち上がっていました。

そんな中でのザーレムライア工房のニーダー氏との出会いは、
今考えると大きなものでした。

写真の右側の方がニーダー氏です。左は画家のヴィンター氏です。当店でもポストカードhttps://perol.jp/SHOP/a-vinta-post8-001.htmlを販売しています。

ブレフェルト氏の元で金属楽器作りの研修をしている時に、
「ライアを作っている知り合いがいるけれど、会ってみないか?」と
言われました。

会って話をしているうちに、「何とか協力してあげられれば。」
という思いから始めた取引が、今は店を支えてくれています。

それだけでなく、ライアや楽器に関する深い知識や
ニーダー氏の人となりについて知ることができました。

ドイツで学んだのは30年以上前のことですが、
3年間の滞在の間に得たことで一番大きかったのは、
ペロルさんをはじめ、人との出会いから得たことでした。

言葉も顔つきも住んでいる環境も違う人たちと接していく中で、
「この人たちも、自分と同じように喜び、悲しみ、
相手を思いやりながら日々暮らしているんだ。」
という、当たり前のことが体を通して分かったことでした。

ともすると、ヨーロッパという憧れの国の暮らし(私だけ?)として、
自分とはかけ離れたものとして見てしまっていましたが、
「同じように生きているんだ」と気が付きました。

良い人たちの出会いのお陰かもしれません。
感謝です。

それから何度となく日本とドイツを行き来して、
日常的にも電話やメールでやり取りする中で、
二つの別々の世界がつながってきている感じがします。

こうやって、田舎に暮らしていても、
海外の人たちの暮らしを隣町的な感覚で実感できる気がします。

それぞれの人が自分の住んでいる環境の中で、
それぞれの暮らしを営んでいる。

自分も頑張っていこう!と思える瞬間です。

でも、
やはり、
ときどき、
シュバルツヴェルダーキルッシュトルテ
(ケーキの一種)
が食べたくなります。

2022/2/18 井手芳弘

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