290 ドイツ研修4

ドイツ研修からだいぶん経ってしまいました。
今は、緑のしぶきが至る所でまぶしく輝いています。
日々の現実の中に埋没して、

はるか遠くの出来事のようです。
思い出しながら、書いていきたいと思います。

今回もずっとザーレム工房にお世話になりました。
滞在中、一度だけ遠出をしました。

響きの楽器を作る方のところに訪ねていきました。

ニーダー氏から、

ヴィルツブルグの近くに

とてもいい響きの楽器を作る人がいる

ということを聞いて尋ねていったのです。

距離的なことを何も考えず、

行きますと約束をしていざ列車の時間を調べると

5時間ほどかかることが分かりました。

泊めていただける、との好意に甘んじて、

一泊の旅行でした。

それも、列車を5つほど乗り継いでの行程なので、

時間表を何度も確認しました。

おかげさまで、大したピンチもなくたどり着き、

戻ってくることができました。

ザーレムライア工房では、

バスローブ姿の病み上がりのニーダーさんとの対話から始まりました。

「最近、借金の返済をやっと終わって、

お祝いしたんだ。」とニーダーさんは語り始めました。

前回訪れたときに、この家を買って、

自分で改造していったのは優雅な趣味からじゃなく、

改装費用がなかったからだ、ということを知りました。

それでも、家を買い、

工房として改装したり、材料を買ったり、

弦工房を整備したりで、

毎月たくさんの返済をしていたとのことでした。

「うっそ?!」って感じです。

「それを支払うためにも土日もなく仕事をしてきた。

でも、それからも解放された。

これからは、自由な気持ちでライアを作ることができる。

僕らには定年はないしね。

年金にしても勤めている人と比べると、

微々たるものだから、

お互い、個人でやっていく仕事だから大変だよね。」

「ここのところ、注文してくる人たちの感じが変わってきてる。

自分はこれをアマゾン気質と呼んでいるんだけど、

ライアを単なる商品としか考えていない感じで、

注文しても、メール一本で

簡単にキャンセルしてくるし、

注文する際も、他のところが安かったんだけど、

安くならないか、ということを言ってきたりする。

ライアを一台一台その人のために作っている

ということが分かっていないんだ。」

「それと、今、楽器店が

どんどんつぶれていっている。

それは、楽器を買う人が、

楽器店にやってきて、楽器を確認し、

ネットでより安いものを購入するからだ。」

前回は、楽器の職人がどんどん食べられなくなって、

廃業していく人が増えているという話をしていたのですが、

今回はネットによって販売店がどんどん無くなっていっているとのこと、

これは私たち小売店にとっての

存続の問題でもあり、

他人事では済まされない問題でもあります。

このような問題は、

今や国を超え

瞬時に世界全体に広がっていく感じがあります。

これをグローバリゼーションと呼ぶのでしょうか?

「ここは、世界の果て。」

ニーダーさんの好きな言葉で、よく出てきます。
私としては、メジャーな場所に感じるのですが…

「何にもないところ。

何も特別なことが起こらずに、同じような日々が続く。」

「でも、自分はこの場所が好きだ。」

「特に気に入っているのは、

いつも遠くにアルプスの山並みが見えることさ。」

そういう場所で作られたライアが

世界中に送られていっている、

と思うと何とも不思議か気持ちになりました。

世界中から、いろんな人たちも訪ねてきます。

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