あれだけ<暑い>と言っていたのに、
気が付くと寒くなっています。
毎年のことと言いながら、
その変化に驚くばかりです。
あれほど攻撃的だった太陽は、
温かいまなざしを投げかけてくれています。
いよいよ、日向ぼっこに最適な季節がやって来ました。
壁に寄り添って体を温めていると、
心も温まって、溶けていきそうです。
そして、小さかった頃のことをふと思い出したりします。
若い頃から、いろんなことをやりましたが、
「最終的に残る趣味は日向ぼっこだろうな。」と感じていました。
それが実感となりつつあります。
ただただ、お日さまの暖かさに感謝するばかりです。
イチョウの樹も黄色く色づいて、
感謝の気持ちを喜びと共に返しているかのようです。
そういえば、感謝祭というお祭りもありますね。
日暮れが早めに訪れるようになった分、
夜空の楽しみが増します。
先日は真夜中に空を見上げると、
満月に近い月がおうし座のそばで、
ほぼ真上に上がっていました。
冬は満月の季節です。
「月天心、貧しき街を通りけり」蕪村
私の大好きな俳句の一つです。
というか、俳句はいくつかしか知りません。
12月の満月は一年中で一番高く上がります。
このことは30代になって気が付いたことで、
それから毎年、「なるほどね~」
と思いながら冬の満月を眺めることになりました。
空高いところから閑散とした大地に月の光が降り注いでいる様を見ると、
身が引き締まる思いです。
実は、つい最近、
今年のこの季節の満月がいつもの年よりより高く上がる
ということを知りました。
来年、再来年と、より高くなるようです。
月は約18年周期で冬の満月の高さを変化させている、ということです。
あと10年ほどすると冬の満月の高さは今より10度ほど低くなるそうです。
このことを知ったのは星座のカレンダーからです。
毎年、この季節の私の行事として
星座のカレンダーの翻訳があります。
ドイツのシュタイナー関係の出版社から出されているカレンダーで、
毎月の美しい星空の図に月や惑星の動きが描かれています。
そのほかに、その月のトピックなどが書かれています。
その文章を大変苦労しながら翻訳していくのですが、
毎年、驚くようなことが掲載されていて、目から鱗状態になります。
苦労して翻訳する甲斐があります。
今年は、ケルトの遺跡のことが書かれていて、
<18年周期で遺跡の入り口から月の光が奥まで届くような作りになっていた>
という記載がありました。
<古代の人たちは、この月の周期のリズムを知っていたのだろうか?>
と付け加えられていました。
「古代の人たちはそういうことまで知っていたのかも?」
と考えると、驚くしかありません。
星空に関して長年自己研修を重ねてきた私は、
「もう、ほとんど星空のことは理解した。」
「私ほど、星空の動きを理解している人間はいない。」
「えっへん!」
という自負を持っていますが、
「え~!?」「そんなことあるの!?」
「し、しらなかった…」
と毎回それが覆されてしまいます。
そして、自信なく、謙虚にさせられてしまいます。
「きっと、知らないことが山ほどあるんだろうね~」
って、感じです。
まるで、節分の豆まき(大晦日の大掃除)のようです。
私の中の邪悪なものが流されていきます。
ちなみに、今年から再来年にかけての満月の高さが最高潮になるのは、
太陽の軌道である黄道と月の軌道である白道が5度ずれていることから起きます。
そのことを知識としては知っていたのですが、
実際にどのような現象として現れるのか考えたことがありませんでした。
このころの楽しみの一つはお月様と木星、金星の関わりです。
9月29日の中秋の名月の時、月はまだ木星の右側にあって、
その2日後にほんの少し欠けた月が木星の側にやってきました。
「今度出会うときは満月になってくるからね。」
そう言うと、お月様は次の日は木星を通り越し、
夜ごと、少しずつ欠けながら星座を左の方へどんどん移動します。
1週間後、三日月(26日月)になった月は夜明け前に明るく輝く金星と出会います。
そして、その20日後に、今度はほぼ満月になって木星の側にやって来ます。
「やあー、一ヵ月ぶりだね」
「木星さんも明るく輝いているね。」
満月が側にやってきたころ木星は1年中で一番輝きます。
二人でお祝いした後、
「またね~!」
とお月様は木星と別れて、金星へと向かいます。
金星と出会うお月様はいつも細っちょです。
こんな感じで、
お月様は木星と金星の間を行ったり来たりしながら繋いでいます。
先日再び木星とお月様が出会ったときは、
まだ満月になる前でした。
きっと、朝方出会った金星の話でもしていることでしょう。
* *
「テレビもない、ラジオもない、パソコンも、携帯も電気もない、」
「でも星空があるさ~!」
「でも星空があるさ~!」
の頃の人たちはきっと、
この星空で行われるドラマを日々楽しみに眺めていたのではないか、と想像します。
そして、そんな中からたくさんのお話も紡がれていったことでしょう。
2023/12/01 井手芳弘