上海からパリへは不安なfright(flight)でしたが、
それでもいつしか眠りについていました。
パリ空港からチューリッヒ空港へは何の問題もなく、
ニーダーさんところへも何の問題もなく到着することができました。

列車の中では、余裕で動画まで撮ったりしています。
何度、この列車に乗り通ったことでしょう。
最初は驚きに満ちた風景が、
いつの間にか当たり前の景色になっています。

「この飛行機の中で日本人オレひとり!」
などの緊張感と自意識もいつの間にか忘れています。
慣れというのは恐ろしいものです。

そう、今回は(いや今回も)仕事で来ているのです。
そのような気持ちが入るはずがありません。

到着した次の日から、早速作業です。
これまで、何度も訪れて、たくさん作業を見てきたのですが、
いざ、自分で作るとなると、
何も分かっていなかったことに気づかされます。
そして、「これほどいろんな作業があったのか!」
と今更の驚きです。

今回の目標の一つは弦を作れるようになること。
そして、弦の機械を自作するための準備です。
前回に来た時も少し弦づくりをトライしましたので、
少しは分かっているつもりでしたが、やはり難関です。

最初の、弦にハトメを取り付ける作業からつまづいています。

ハトメを挟んで弦をねじるだけのことですが、均等にねじれません。
ニーダーさんがやるのを見ていると、簡単そうなのですが、
実際にやってみるとかなり大変です。

ここで私の金言
<世の中には、
とても難しそうに見えてやってみると簡単なものと、
簡単に見えて、やってみると、とても難しいものがある。>
もちろん、これは簡単そうに見えて、
実際にやってみると難しいことの方です。

見ていただけではわからないことでした。
それでも、失敗を繰り返しながら練習を繰り返すこと丸1日、
何とか形になってくるから不思議です。
それでも、「早い方だ。」とほめて(慰めて?)くれました。

次の日は、巻き線を作る作業です。
やはり、ニーダーさんが見本を見せてくれます。
いとも簡単に弦が出来上がっていきます。
「わかってる。わかってる。」
「簡単そうに見えてやると難しいことの一つだよね。」

ニーダーさんが見ていると緊張で作業どころではないので、
一人になって作業です。
ニーダーさんの作業を思い出しながら作業を始めますが、
しょっぱなから、巻き線がうまくかからないや、
機械がうまく回らないわ、で右往左往です。

何とか機械が回り始めると、
今度はその動きに追われて超集中!
じたばた、よろよろ、
とても見られたものではありません。

ふと同じような体験を思い出しています。
大学生の時に初めて小さなヨットに乗せてもらった時のことです。
ヨットを回転させるときに舵と帆を同時に操らなくてはいけないのですが、
あまりの不器用さに大笑いをされてしまいました。

ああ、また思い出してしまいました。
大学生の時にクロールが出来なくて、
夜中に一人で練習していたことがあります。

「ひどかったな~、あの時も・・・」

それでも、何とか最初の弦が仕上がりました。
ぐったりです。
頭がボーッとします。
放心状態でしばらく立ち尽くしてしまいました。
こんな調子で、先が思いやられます。

ザーレムライア工房は住居も一緒ですが、
それだけでなく、一階にはホールがあり、
そこで様々な催しやセミナーが開かれています。

一昨年にはそこでホールの完成も兼ねて、
工房35周年(コロナでできなかったので実際は37周年)の記念パーティが行われました。

残念ながら私は行けなかったのですが、
100名ほどの参加者が一堂に会したそうです。
とても素敵な場所に仕上がっていますが、
もともと牛舎だったところで、
なんと地面を1.5m以上掘り下げて中に石を敷き詰めたそうです。

ホールの隅にはたくさんの珍しいライアが展示されています。
100年ほど前に作られた最初のライア、
ギリシャ時代の復元されライア、
この近くで見つかったケルトのお墓から出土したライアのレプリカ、
など珍しいものがたくさんです。
これほどの物はほかで見ることはできません。

一番左端には黄金色のザーレムライアが展示されています。
「これは?」と聞くと、
「これは道化用のライアさ。」
という答え。

なんと、このライアを使ってお笑い劇をする予定だとか。
実は、ニーダーさんは何度か道化のセミナーに通っていて、
孫たちと道化の劇をするのが楽しみだそうです。

作業場のいたるところにはユーモアにあふれる言葉やイラストが張られていて、
ニーダーさんの人柄がしのばれます。

そのほかにもコーラスの練習、
アントロポゾフィーの研究会、
ダスカロスの練習会、なと様々なことに取り組まれていて、忙しそうです。
単にライアを作るだけではなく、
アントロポゾフィーの深い学びと、
それをライアを使って実現させていこうとする姿勢に頭が下がるばかりです。
「これから、音楽の研究に専念したい。」
というニーダーさんの気持ちを応援していきたいと思います。

ニーダーさんに
「日本の皆さんに何かメッセージをお願いできますか?」
と尋ねると、
快く応じてくれました。

ニーダーさんからのメッセージはこのYouTubeをご覧ください。

2024/4/5 井手芳弘

つれづれ480 ライア引き継ぎ計画ON-2」への2件のフィードバック

  1. 1月にライアーを注文させていただいた奥本です。素敵な工房ですね。動画ではニーダーさんのお人柄を感じ鳥の声も沢山聞こえ感謝でした。

    1. 奥本様、
      コメントありがとうございます。
      工房も気に入っていただき、ありがとうございます。
      ライア、お待たせしますがよろしくお願いします。
      ペロルいで

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