ある露天風呂に入った時、隣のおじさんから
「いいお湯ですね。」
と声を掛けられました。
「そうですね。」
「長い時間入っています。」
と答えると
「そんなに長風呂をして何をしているのですか?」
と訊かれ
「考え事をするのに良いのです」
と答えると
「何を考えているのですか?」
と更に訊かれました。
「そうですね、今は遠近法について考えています」
と言うと
「設計士の方ですか?」
と尋ねられ
「いいえ、ただの一介の者です」
と答えました。

そうなのです。

遠近法が気になって仕方がないのです。
それも
<三本のポールの謎>です。

「えっ?」「また?」
と思う人は、ずっと昔からの知り合いだけです。
それほど、昔から考えてきたことなのです。

それは、こういうことです。
三本の高いポールが目の前に立っています。
真ん中のポールの先端を見上げると
左右のポールが
真ん中のポールに寄り添うように斜めにたっています。
ところが右のポールの方を向くと
途端に左と真ん中のポールが
右端のポールに寄り添うように斜めに立ちます。
再び真ん中のポールに目をやると
やはり、真ん中がまっすぐで両サイドが倒れています。

私は、こういう現象のことを
<小人さん現象>と呼んでいます。
右のポールに目を移した瞬間に
小人さんが真ん中と左のポールを傾けるのです。

ところが、なんと
この問題の謎が解けたのです。

「バンザイ!」
「小人さんのせいにしなくてもよくなった!」

そのヒントは窓ガラスでした。
遠近法で風景を描くとき
ガラス窓を通して見えている風景を
ペンでなぞることと同じだ
ということに気が付いたのです。
なぞっているときに
見る場所を変えてしまうと
映るものも変化していきますので
場所を変えてはいけません。

窓ガラスを通して三本のポールを写します。
高くて窓に入らないので
入るまで近づきます。

写しました。

あれ、窓ガラスに描かれた三本のラインをよく見ると
三本とも平行線になっています。
「???」
でも、写した場所から窓ガラスのラインを見ると
三本の線が上で近づいて見えます。

そうなのです。
窓ガラスには三本の平行線が描かれているのに
近づいてみると
遠近がかかって上の方が狭まって見えるのです。
うかつでした。
窓ガラスに描かれた平行線に
遠近がかかってしまっていたのです。

「えっ、それでは問題が解決していない?」

そうなのです。
ここからが問題です。

窓ガラスを外して上に傾けます。


まず、真ん中のポールが真ん中に来るように
真ん中のポールが正面になるように窓ガラスを調整します。
(小人さんたち、しっかり窓を持ってて!)
そして、透けて見えるポールをペンでなぞります。
真ん中のポールがまっすぐに立っていて
左右のポールがそれに寄り添う図が写し取れました。

次に、右のポールが窓ガラスの真ん中に来るように
右のポールの正面になるように窓ガラスを調整します。
そして、再び透けて見えるポールをペンでなぞります。
右のポールがまっすぐに立っていて
真ん中と左のポールが
それに寄り添う図が写し取れました。

「やった!!」

見える、ということは
目の前に窓ガラスを置いているようなものだったのです。
そして、視線を移すことで
その窓枠の傾きを瞬時に変えているのです。

小人さんの仕業ではなかった。

いえ、小人さんたちは
私が見る向きを変えるたびに
瞬時に重たい窓枠を移動させてくれているのです。

小人さんたち、ありがとう!

2024/07/19 井手芳弘

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